福島の建築 ⑯
2010年 02月 08日
この別邸は、明治41年(1908)8月に有栖川宮威仁親王が建てたもので、その9月には、皇太子だった大正天皇がここに滞在して、「天鏡閣」と名付けたとか。
その後を高松宮宣仁親王が有栖川の祭祀と共に引き継いだという。
年末には、NHKドラマ「坂の上の雲」で、東郷平八郎(渡利哲也)と秋山真之(本木雅弘)がビリヤードするシーンが、この撞球室で撮影されたということで、家族間でまたまた話が盛り上がった。
「福島民報」(2010/2/1)「豊かさへの礎~ふくしまの近代遺産」でも、この「天鏡閣」が取り上げられていた。参考になったのが、この建物の保存までの経過。羅列すると、
昭和27年(1952)には、別邸と共に、県に払い下げられる。
昭和46年(1971)、老朽化に伴い、使用中止となる。
昭和54年(1979)2月本館、別館、表門が国の重要文化財に指定される。
昭和57年(1982)10月一般公開という経過のようだ。
その経緯の中で、目立たない多くの地道な努力と愛着が、保存への力になっているということが分かる。使用中止になって、地元の方の道をつけ、雪下ろしをし、建物に風を入れ、老朽化を防ぐという努力は無言だが保存への力だったのだろうなと思う。
最終的には、肩書のある方の保存に対する思い入れと調査、それに行政の判断者の決断で、保存への遠い道のりが動き出す。
笹木野とは遠いし、この改築は昭和の後半なので、関係はなさそうだが、塀が煉瓦造りであることにこだわってしまう。
散歩人が、いいなと思ったぐらいで、これも残せばいいのになどと勝手な事が言えないと、改めて思う。せいぜい、気に行った景色を心に残す、その補助手段として、写真に残す。そんなところだ。
この建物、かっこいいと思っているのが、中央の八角形の塔屋。