「平泉―みちのくの浄土」展⑤
2008年 11月 29日
騎師文殊菩薩半跏像と四眷属立像が展示される部屋は、最初に藤原清衡発願の紺紙金銀字交書一切経が展示され、その奥に、秀衡発願の紺紙金字一切経が展示されている。この形態を持つ経文を「中尊寺経」と呼び、平泉で藤原氏3代が、独自の文化を形成した平安時代後期の遺品の中の一つとのことだ。
仏教典籍の集成である一切経を書写することは最大のくどくだが、それを金字や銀字で一切経を書写するのには大量の金銀はもちろん写経僧も多数必要であり、藤原氏のけた外れの経済力と平泉文化の水準の高さを示すもとのことだ。
パンフレットによれば、全部そろうと約1万巻にもなるそうだが、このお経の多くは和歌山県金剛峯寺(高野山)という寺に伝わっているものとのことで、このうちこの展覧会では、19巻を前期後期に分けて展示しているという。これも、国宝に指定されているという。
その奥に金光明最勝王経金字宝塔曼茶羅図が展示されている。塔がお経の文字で描かれていて、これも中尊寺に伝わる国宝とのことだ。
経典の書写の変形として、経文を塔形に書写することも、中国をはじめ、わが国や朝鮮において行なわれていたという。経塔とか文字塔と呼ばれ、これは造塔と写経の両作善を兼ねるものとして、その功徳は量り知れぬものとされたという。
この金字宝塔曼陀羅は、この文字塔の周辺に経意を絵解きした絵画作品で、紺紙に金泥で経文を九重塔形に書写し、経の荘厳を行うものだが、これは写経・経解説・造塔の諸作善を合体したものとのことだ。
経意絵の配置はわが国独自のユニークな手法とのことだ。
中尊寺建立供養願文、平泉の絵図、東方見聞録の複製の原本等も含め、どれ一つとっても、それぞれが歴史的文化的に重要なものが、二つの部屋にずらりと並んでいる。
こちらの知識も感性も追いつかない。世界遺産登録を目指す「平泉の文化遺産」展ということが、納得できる。