お墓の前でなかないでください
2007年 02月 25日
この本は、死者祭礼の習俗や儀礼の常識を民俗学から問い直し、そのありようを探っている。祖先への敬愛、家制度の因襲、お盆・葬儀・お墓参りなどのやり方、嬰児や戦死者の鎮魂。これらのこととお墓や死者祭礼の関連を探っている。
若い頃、今で言う地域学の方から、「亡骸」は、「なきがら」で、魂のない遺体ということだということを念頭に調査しているということを聞いたことがあった。この本の読後には、両墓制の考え方のようだと分かる。しかし、このときには、実感のない世界だった。
実感のある問題になったのは、親との別れの経験である。親の死が訪れた時、それを悲しんでいることができないで、しきたりに追われていった。あり方などの原点について考えるゆとりは無かった。
最近になって、心にゆとりができ始めると、葬儀、お盆などのお墓参りをしている自分と、しきたりと死者への敬愛の関係が気になり始めていた。そんな時に、千の風に出会ったので、死んだ親はどう思っているのだろうかと気になりだしていたところだった。
氏は、いろいろな風習の考察から、墓制について、処理形態、 遺体遺骨の処理方法、二次的装置としての石塔建立という三つの観点からから分析する。
そして、その様式の考察から、以下のマトリックスにする。
処理形態 処理方法 石塔(二次的装置) 内容
遺体 埋葬 非建立 石塔を伴う墓制の前史
風葬・遺体遺棄・盛り土・自然石等設置を含む
遺体 埋葬 建立 単墓制 両墓制
遺骨 埋葬 非建立 墓上植樹
遺骨 非埋葬 非建立 無墓制
遺骨 非埋葬 建立 現代のお墓カロウト式石塔
この観点で、民族的世界を起点として、現代のお墓が誕生するまでを確認していく。そして、仏教とのかかわり、寺とのかかわり、戦死という今まで未経験の死とのかかわり、子どもの成長段階と遺体埋葬の風習等から考察している。
読後に、やはり、死んだ人は、お墓に眠ってなどいないし、死んでなんかいないんだと改めて実感する。