地元学でいう「風の人」として足元を見つめたり、できことを自分の視点で考えたりしています。好奇心・道草・わき道を大切にしています。


by シン
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学力の実態の客観的な捉え方

調査報告「学力低下」の実態 | エキサイト商品情報
教育にかかわる調査データーは、主張のための材料で固めることが多い。主張のある論調につけられたデータは、科学を装うためである事が多い。行政の政策を進めるためのデーターだったり、反対するためのデーターだったり、自分の教育方法を流行らせるためのデーターだったりする。そういったデーターが横行する。
  そんな中で、本書は、やや旧学力観によるということはあるが、現状の学力の状況をより客観的にとらえていると感じる。科学的欲求に裏打ちされたデーターが提示されていると思うのだ。本書の調査結果は、次のようである。
 
義務教育段階ですいでに学力に格差ができている。子どもの意欲やよさを大切にしたはずの教育が、基礎学力低下と格差の拡大をもたらしたと考えられる。また、小学校段階から、学習意欲行動学習成果の家庭環境の階級差を生んでいる。それは、総合的な学習の時間・新学力観型の授業への取り組みにおいても同様であるというものだ。

  改善策について、本書の提案は、義務教育段階のできるだけ多くの子ども達の下支えが大切であるとする。
  具体的には、家庭学習を含めたしっかりとした教科の学習指導と総合的な学習の連携や、それを支える地域住民と行政のサポートという構図がほしいということのようだ。
  条件整備不十分で理想に振り回され実際の教育が手薄になって、学びに乗り遅れた子どもが階級的偏りをもって作り出されているという実態を認識することを提起している。どの子どもも自ら学ぶ意欲を自然に持ち合わせ、自己選択できる強い個人の仮説は、義務教育には当てはまらないとしている。
  また、20年後30年後の社会を考え、上滑りの言葉の議論に振り回せない事が大切とも提起している。
  これらの提案は、単純に繰り返しドリルを大切にするといった考えや、発展的学習に焦点をあてた国の政策の提案に異議を唱えていると受けとっていいだろうと思う。

  私が、本書が客観的データーを提示していると判断した理由は、次の2点に焦点を当てた調査目的としていることと、調査方法である。

1 日本の教育が抱える問題を見通し、問題解決を図るための正確な現状認識のため。
2 雇用の不安定化や賃金格差の拡大する時代の中で、公教育が果たすべき役割を考える ための知識の基礎を提出するため。
  更に、調査方法として、指導要領改訂前と改訂後の2点につついて、子どもの生活状況、学習状況を捉え、学力との相関を考察すること。特に、通塾の要素を考慮して公教育の及ぼした影響による結果を考察できるようにしていることが特徴である。

  本書の結果を安易に要約すべきではないとは思うが、私の感覚を確認するために、あえて要約させてもらう。
1 全体的に学力は下がっている。
2 できる子とできない子の差が開いている。
3 通塾の影響を考慮すると、公立学校の学習指導の力が落ちている可能性がある。特に 中学校で顕著である。
4 通塾者のデーターからは、塾へ行けば安心とはいえない。学校における授業のやり方の工夫で基礎学力が再びアップする可能性がある。逆に、更に下がれば、通塾しても学力の保障はできない。

  領域別では、昨今話題になっている旧読み書き算の学力低下ではなく、もっと広範囲に学力が低下している。
当てずっぽの回答が可能な問題でも、無回答者が増えている。
小学校では通塾者と否通塾者の差が少なくなっている。中学校では逆に開く。特に、文字と式・方程式など、抽象性が高まり、数学的要素が強い分野で差が開く。


 これらの結果から、基本的な内容を分かりやすく教えることが大切であることを訴える。 国語では正しく読み取るための言葉の基本的なルールや知識を疎かにすると、コミュニケーション能力・伝え合う力を重視した指導へ転化できなくなる可能性があると考えている。
子どもの主体性に任せる教育ばかりでも、発展的な学習ばかりでも更なる格差を生む可能性があるという。今の国の教育の進め方に疑問を呈している。

  同時に、以下のように、今までの教育にも疑問を呈している。
  家庭教育では勉強離れが進み、テレビ視聴の増大につながった。ゆとりを重視し子ども達のよさや個性を重視する教育界の風潮が子ども達の生活に対する縛りを緩めた。また、社会風潮の学習や努力を否定する言説の影響が考えられる。
子どものよさを生かす教育は、自己イメージ「どちらともいえない」というあいまいな子どもを増加させている。家庭の文化環境が学習態度に大きく影響されている。

 これからの改善の進めかたのヒントに、小学校の学習スタイルが、中学校での伸びとに及ぼす影響の考察を示している。
  中学校での伸びでは、国語科に置いて新学力観による授業の効果が大きいし、数学等では、伝統的な学習も進学力観による学習も行っていることが大切だとのことである。
  政策によって、一見分かりやすい方策を提示されても、しっかりとした実態の把握をもとに考察できる力を、国民に求めるように制度は改正されていることを確認したい。
by shingen1948 | 2007-01-25 19:40 | ☆ 教育話題 | Comments(0)