罪のない子どもはどうするか。
2006年 12月 25日
離婚成立から226日後に誕生した子どもをめぐり、離婚から300日以内に誕生した子は「前夫の子」とする民法の規定とのかかわりでの記事である。記事によると、以下のような概要とのことである。
父親と母親は03年10月末に知り合い、翌月から同居を始めた。父親はその後、母親に夫がいて離婚が成立していないと知った。04年5月17日に離婚が成立し、同12月24日に新たに婚姻届を提出した。5日後に女児が生まれた。当時住んでいた埼玉県蕨市役所に出生届を出したが、民法の規定を理由に受理されなかったという。
事実関係は、以下のようになる。
03年11月末から男女が同居を始めた。
04年 5月半ばに女の離婚が成立
04年12月末に女児が誕生した。
離婚から300日以内の女児誕生で、法律では女児は前夫の子と見なす事になる。
これに対して、二つの意見がある。
その一つは、離婚から300日以内に生まれた子供でも、離婚前から夫婦としての実態が失われていた場合、前夫の子との推定を受けないとの判断で、今夫の子でいいじゃないかという意見である。
別に以下のような意見もある。
この規定は父親が誰かを確定しないということを回避する規定であり、親子関係の安定に大きな機能を果たしている。もし、この規定がなければ、父親の定まらない子が世の中にあふれることになるのではないか。現にこの例でも、母親は今年3月に家を出たまま行方が分からなくなったという。今ごろまた同じように違う男のところに転がり込んでいることだってあり得る。
ここで提示された問題は、どちらがよりよいかという問題だが、にっちもさっちもいかないことだってありえる。次のような例え話ならどうだろうか。
女が、男から逃れてある町にやってきた。ドメストで逃げてきたという例ならわかりやすいだろうか。勝手な女の行為でもいいが、ともかく夫からは逃れてきているという設定である。そこで、男と知り合い、同棲して子どもができた。そのことが、無節操というかもしれないが、ありえなくもない。この時点で相談にのらなければならない立場になってしまったら、その対処方法は、どうすればいいだろうか。私には、次の場合しか思いつかない。
一つは、新しい男の戸籍に入れる場合である。そのためには、婚姻関係が必要になる。婚姻関係を結ぼうとすると、前の夫との離婚が必要になる。それをしなければ重婚になってしまうからだ。しかし、前の夫とは話し合いができないという状況なのだ。したがって無理である。
二つ目の策は、自分だけで育てようとする。しかし、そのためには、現在も書類的には継続している婚姻関係を解消しない限り、前の夫との子ということになる。それでもかまわないとしても、元の男と連絡を取り合うことになるか、少なくとも、動きを察知されることになる。
どうしようもない状況に陥ってしまうのだ。どうすれば罪のない子どものためになるのだろうか。勝手な男と女の行動ではあるが、現実に相談を受けたとき、説教しても始まらない。何とかしてやらなければ、子どもは浮かばれない。子ども第一で、どんなアドバイスをすることができるのか。
今の時代、自分の周りで、こんな相談があったっておかしくないと思っている。
以下に記事の内容を引用しておく。
生まれて2年たつのに戸籍に登録されていない女の子がいる。女児は母親(23)の離婚成立から226日後に誕生、離婚から300日以内に誕生した子は「前夫の子」とする民法の規定があるからだ。「前夫の戸籍に」とする役所に対し、父親(24)は「わが子は自分の戸籍に」と主張する。女児はこのままでは保育園や学校にも通えない。健康保険が適用されないため、父親は医療費の全額負担を強いられている。【工藤哲】
父親と母親は03年10月末に知り合い、翌月から同居を始めた。父親はその後、母親に夫がいて離婚が成立していないと知った。04年5月17日に離婚が成立し、同12月24日に新たに婚姻届を提出。5日後に女児が生まれた。当時住んでいた埼玉県蕨市役所に出生届を出したが、民法の規定を理由に受理されなかったという。
母親は今年3月に家を出たまま行方が分からなくなったため、女児は今さいたま市内にある父親の実家で育てられている。岩槻区役所は、女児を前夫の戸籍に入れた後で養子縁組することや、前夫に親子関係不存在を確認する裁判を起こしてもらうことなどを提案。しかし、父親は「自分の娘を一時的にでも他人の戸籍に入れることは納得がいかないし、前夫とはかかわりを持ちたくない」と話している。
区役所は「女児の将来を考えると気がかりだが、法の原則は曲げられない」と頭を抱える。支援に当たる市民団体事務局長の山中幸男さんは「母親は、父親と同居を始めた時点で前夫とは接点がなく、女児が父親の子供であることは明らかだ。行政は父親の希望通りにすべきだ」と話す。
法務省民事局は「法に基づいた一律的な運用をせざるを得ない。要望を認めるには、国民の意識が高まり、法律を見直すなどして対応するしかない」と話している。
◇法を見直す時期だ
▽二宮周平・立命館大法科大学院教授(家族法)の話 今の法律は、男女関係がこれほど多様化することを想定しておらず、見直す時期に来ている。最高裁判例をもとにすれば、前夫と母親が離婚前は同居していなかったとする上申書を父親が出せば、役所が配慮して認めるなど、柔軟な対応ができるはずだ。子供が戸籍に登録される権利を尊重すべきで、早急に保育園などに行けるようにしなければならない。
▽離婚を伴った親子関係 民法772条は、離婚から300日以内に生まれた子供は、離婚前の夫の子と推定すると規定している。1898(明治31)年に施行された民法は度々改正されてきたが、772条は実質的に変わっていない。最高裁は69年に、離婚から300日以内に生まれた子供でも、離婚前から夫婦としての実態が失われていた場合、前夫の子との推定を受けないとの判断を示している。