熊阪台州氏(その2)42~高子山の「高子二十境」③
2018年 05月 07日
解説されたことの言葉の確認が必要になる。
まずは、「孤標は、ただちに承露盤であり、仙人掌であり金狄掌である」とあることについての確認。
「孤標」とは、他よりも一際すぐれているという意を含んで「山や樹木の特出的頂端」を意味するようだ。
覇陵氏がいう特出的頂端は、丹露盤と称する高子山山頂の岩を指している思う。
その鑑賞の解説では、この「孤標」は、直ちに承露盤・仙人掌・金狄掌をイメージしなければならないといっている。
しかし、当方は、承露盤も仙人掌も金狄掌も確認しなければならない事だ。
上手い具合に、「世界大百科」の「仙人掌」の解説は、以下のように「甘露」とのかかわりや、建章宮の「承露盤」の概念も関連的に解説してくれる。
「仙人掌」は、天下泰平のしるしとして天からおりるとされる「甘露」を受けるための器物で、仙人が手のひらで盤を捧げ持つ形をしている。
漢の武帝のときに、建章宮に高い銅柱の「承露盤」が作られ、その上に、この「仙人掌」が置かれて「甘露」を受けたと伝えられる。
なお、この「甘露」は、玉屑と混ぜて飲むと、長生不死ができると信じられていた。
「金狄掌」は、別に確認する必要がある。
「金狄」の狄は、地域的な差別があるようだが、別称「金人、銅鑄的人像」とある。
その「金人」を確認していくと、直訳的には、金属でつくった人の像の意だが、仏陀や仏像を意味するとの解説もみる。仏教の中国への伝来の歴史的事実と連関する処々の伝説があって、それとの関連があるらしい。
次に、ここまでの確認をもとに、改めて熊阪覇陵氏の五言絶句を確認し直してみる。
丹露盤 熊阪覇陵
丹巌高突兀
沆瀣滴雲寒
借門孤標勢
何如承露盤
その釈文
丹巌(たんがん)高くして突兀(頭とうこつ)たり
沆瀣(こうがい)雲に滴(したたり)て寒し
借門す孤標の勢(いきおい)
承露盤(しょうろばん)に何如(いかん)
「伊達の香り」の「二十境の漢詩鑑賞」では、次のように解釈している。
赤い色の岩が高く聳え、空に突き出ている
夜露が雲の中を滴り落ち、寒さを感じさせる
聞きたい 突き出た岩の感じは、
中国の王宮にあるという承露盤と比較してどうであろうか
なお、詩中の沆瀣(こうがい)は、確認した解説の「甘露」と同義の仙人の飲み物であるつゆということのようだ。
また、「丹巌」の丹は赤い色を意味するようだが、こだわらない方がよいようだ。
「丹露盤」の鑑賞の解説では、「その一つの岩がどんな形でどんなかげりがあり、どんな光と色を帯びて、どんなかなしみや喜びを称えているかということはどうでもよい」とある。
散歩という範疇ではあるが、台州氏や盤谷氏の詩もこの流れでとりあえず解釈ができたつもりにはなれる。