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地元学でいう「風の人」として足元を見つめたり、できことを自分の視点で考えたりしています。好奇心・道草・わき道を大切にしています。


by シン
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森鴎外と福島24

 前回は、「日本種痘の恩人」から横糸のように紡がれた「渋江抽斎」その16からその20までの池田家宗家の墓探しの話を読み、そこから、「伊沢蘭軒」その87から90までの福島市大町在住池田宗家第5世池田鑑三郎氏の案内でその関係性か確認されるということに辿り着く読み方をした。

 今度は、「渋江抽斎」の作品を読む中で、池田家宗家の話に出会うという読み方をしてみたいと思っている。

 この作品、東北という限定した地域の散策という視点でみれば、津軽地方とのかかわりだろうか。
 ただ、鴎外氏がこの方に直接的に興味を持ったということではないようだ。
 「武鑑」を蒐集しているうちに、「古武鑑に精通している無名の人の著術が写本で伝わっている事、その無名の人は自ら抽斎と称している事、其の写本に弘前の渋江という人の印がある事、抽斎と、渋江とが若しや同人ではあるまいか」との思いで尋ね歩く。その結果、抽斎というのは経籍訪古志を書いた渋江道純の号であることを知り、更に遺族の現存している事も知るようだ。

 作品では、「武鑑」を蒐集から「抽斎」と「渋江」が若しや同人ではあるまいかと思い尋ね歩く辺りを、その3からその7あたりまでに記し、抽斎氏の墓や遺族を訪ねて知る辺りをその8からその10辺りに記す。
 その結果整理された渋江抽斎像が、作品の最初からその2まで記される。

 そして、その11から渋江抽斎とかかわる人々が描かれる。その中の一人が、その14に登場する「伊沢蘭軒」氏で、これが次作になるという繋がりのようだ。その「伊沢蘭軒」氏とのかかわりで、その16に「池田京水」氏が登場し、その17で「日本種痘の恩人」からの横糸に繋がるという構成のようだ。

 文学作品を愛好する人々には評判が悪かったというその訳が分かるような気がする。
 無名なのは主人公「渋江抽斎」だけでなく、その方にかかわる人々も無名であるのだが、これが鴎外氏の散策で史実に裏打ちされた人々であることが強調される。そういう人々が次から次と登場してくるのだ。
読者に、この無名の人々を全部知っていてほしいと要求しているようなものだ。
 更には、その65以降はその主人公もいないいない。 これについて鴎外氏は、作品の中で次のように語る。
 大抵伝記はその人の死を以て終るを例とする。しかし古人を景仰するものは、その苗裔(びょうえい)がどうなったかということを問わずにはいられない。そこでわたくしは既に抽斎の生涯を記し畢(おわ)ったが、なお筆を投ずるに忍びない。わたくしは抽斎の子孫、親戚、師友等のなりゆきを、これより下に書き附けて置こうと思う。

by shingen1948 | 2017-01-31 09:30 | ◎ 地域散策と心の故郷 | Comments(0)