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地元学でいう「風の人」として足元を見つめたり、できことを自分の視点で考えたりしています。好奇心・道草・わき道を大切にしています。


by シン
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森鴎外と福島⑩

 「北游日乗」に、「眞間の底児奈が祠」詣の話になるまでの経緯を概観する。

 鴎外氏は、明治15年2月から3月にかけて北越に徴兵の業務遂行の旅に出る。
 その出発が2月8日なのだが、その出発の時に、鴎外氏の漢詩の師匠である「佐藤應渠」氏が詩歌をもって見送りに来て下さった。
 鴎外氏は、小綱町三丁目の河内屋で券を買って、新大橋から通運丸という船に乗る。ここから船旅になる。
 鴎外氏は、その船旅の景色を楽しんで詩詠んで楽しんでいたのだが、そうする中で「徒然なるままに『舊遊』の事などおもひ出つ」ということだった。
 その「舊遊」について思い出した事というのが、学生時代の6歳年上の親友賀古鶴所氏と緒方収二郎氏と旅した事の思い出だったということだ。
 里見義弘の墳を弔って、酒を酌み交わしながら天文永禄の昔など語ったのだが、その帰りに眞間の底児奈が祠に立ち寄って詣でた時に、次のような詩を詠んだ地とのことだ。
 「満目寒烟秋色悲笛聲楓影立多時斜橋落日一條路最是傷蝴蝶祠」
 熊阪子彦の説に氐胡奈とは蝴蝶の義なりとあったので、「蝴蝶祠」とした。

 以下は、この船旅の景色を楽しんで詠んだ詩だ。

 烟雲冥處鱗光動 煙雲の冥き処鱗光動き
 疑是髯龍騰九天 疑うらくは是れ 髯竜の九天に騰るかと

 「森鴎外と中国文化~その漢詩から見て(陳 生保)」によれば、鴎外氏に一番影響を与えたのは、唐詩なのだとか。
 幼少のころから唐詩を受読し、『唐詩選』の中の多くの詩を諳んじていたという。唐の著名な詩人である李白、杜甫、白楽天、王維、寒山、杜牧などはすべて鴎外漢詩に投影しているという。この詩についても、その事が読み取れるのだそうだ。
 その観点から、次のように解説する。

 いまにも雨が降ろうとする空を描いた詩句だが、「疑是」の句は、廬山の瀑布を描いた李白の詩「廬山の瀑布を望む」の詩句「飛流直下三千尺、疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと」をふまえているだろう。ただ、李白は銀河が落ちたのかと瀑布を形容したのに対し、鴎外は、鬚もちゃの竜が天にのぼるのかといい、航行中だった利根川を表現したのである。天から降るのでなく、天にのぼるというように、方向を逆にしながら、李白の表現を生かしたと言えよう。


 鴎外氏の作品や日記を確認するのに、漢詩の素養のなさが壁になってはだかっている。一度咀嚼して解釈を与えていただけるのがありがたい。
by shingen1948 | 2017-01-15 09:28 | ◎ 地域散策と心の故郷 | Comments(0)