福島市東部から伊達市南部にかけての地区で、米から基準値超のセシウムが検出
2011年 11月 30日
11月14日に生産者の依頼により玄米をJA新ふくしまの簡易分析器で分析した結果、暫定規制値を超える値が検出されたという。その日に福島市放射線モニタリングセンターで再分析も同様の結果となり、15日に県が米の放射性物質調査本調査の方法に準じてサンプリングし、県農業総合センターで分析を行った結果も、暫定規制値を超える630ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたという。
この問題でショックなのは、県の調査で安全宣言された後に、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことにかかわることだろうか。
先に二本松市小浜地区で、暫定基準値なみのセシウムが検出されているはずであり、福島県では、この経験も踏まえたモニタリングをして調査に生かしたはずだと思っていた。
あらためて、その調査がどう生かされたのかということを視点にネットで検索してみる。
検索した範囲では、専門家の方々は、高濃度汚染が起きた主たる原因を、以下のような水田土壌の土性との関連としたように思われる。
この地区(二本松市小浜地区)の土壌は、福島県の多くの水田で見られる粘土がかった土壌と異なり、「全般的に有機物含量が低く、塩基の溶脱が激しく強酸性を呈する土壌が多く、地力的に劣る」「礫質赤色土」が圧倒的に多いように見える。
この土壌の違いで、放射性セシウムの吸着力には、最高で10倍の違いがあるとした。
この福島市大波地区は、福島市という行政区の中では、渡利地区や山口地区と共に、特定避難勧奨地点指定の検討や除染モデル地区の対象になるなどした比較的放射線量が高い地域に囲まれていることは周知のことだ。
更に、近くの伊達市南部の特定避難勧奨地点指定の検討された小国地区や飯舘村の隣接地域である月舘地区とも隣り合うという関係だ。
それでも、この地区での水田土壌の放射性セシウム濃度の調査が行われなかったのは、この土壌主因特殊説とのかかわりだろうか。それとも、伊達市との連続の中で調査点を決定したというかかわりだろうか。
ただ、散歩人が出会う単なる農民の方々は、その話の端々に地形とのかかわりの方が主因と感じているらしいことが伺えた。
比較的線量の低い地区では、僅かなセシウム検出は表面的な問題には上がらない。その範囲の中での話だが、その検出される特徴の共通項は山際と感じていらっしゃるようだった。専門家や科学者から見れば理由なき単純な勘でしかないだろうが、散歩人としては、その素朴な勘を専門家よりも信じるところがあって、勝手に地形主因説が優位だと思っていたところがあった。
今回の確認でも、先の専門家の方の報告に、主たる要因とはしていないが、以下のようなこの素朴な勘の根拠になりそうな部分も見えている。
褐色森林土で栽培した稲を部位別に放射線量を測ると、穂に近づくほど高かったというものだ。穂は7、8月の暑い時期に成長するとのこと。
調査者は、「放射性セシウムを含む山林の落ち葉などの有機物が分解され、かん水と共に水田に流入した可能性がある」と指摘したとのことだった。
今後、大雨の際、土壌に流れる放射性セシウムの量を調査するとのことだ。
今から思えばという事でいえば、二本松市小浜地区で土壌の違いの可能性があったという結果の活かし方の問題ではないのかなと感じる。
素人考えでは、先の考察は、低線量の地区であっても、似たような土壌の所ではその可能性を考慮しなければならないとする資料にすべきだったのではないのかなと思う。それを、特殊な土壌だから他は大丈夫と活用したことに、誤りの原因の一つがあったような気がする。
その背景には、産業としての農業の最後の砦である米にセシウムが検出されないことを願う意識が考察に強く働いてしまったのだと思う。しかし、そのことが、かえって「福島産」の信用を失墜してしまう結果に導いてしまったように思う。
専門家が、単なる農民の素朴な勘に勝るためには、表面に出す必要はないが、主たる要因でないと考察された地形とのかかわりの可能性にもきっちりと配慮したサンプリングで、念を押すべきだったということなのだと思う。
特に、比較的線量の高い地区とその周辺にあっては、そうした科学を農民の素朴な勘で培った常識に近づけるこのような配慮が必要だったのではなかったかと、勝手に思っている。