福島の建築38~藪内時計店
2010年 06月 02日
時計台が懐かしい。
しかし、風景として懐かしいだけではなさそうだ。時を刻むものへの憧れがあった自分が懐かしいということもある。
万年筆と腕時計は、上の学校に合格した時に、その御祝いで買ってもらうもので、貴重品だった。その買ってもらった時計も、本当に必要な時だけ身につけるということで、ふらりと町に出かけるときに持ち歩かなかった。
そのために便利な時計台があったということだ。
飾りではなく、役割を持った時計台だったという懐かしさだ。
万世町通りに、新たに時計台ができたが、これにはそういった存在感は期待できない。みんな時を刻むものを持っているからだ。
腕時計、携帯電話、……。欲しければ100円ショップにだって売っている。
この藪内時計店は、「ふくしまの西洋造り~明治洋風建築の通観(草野和夫著)」では、店舗が洋風だったことに着目されている。
甚平火災以降でも、なかなか洋風の店舗は現れていなかったという。そんな中での洋風店舗ということだ。
「明治22年に改築された土蔵造り二階建て擬洋風店舗で、二階中央に時計台を上げていた。この時計台は、福島市の指定文化財として現存する」と紹介する。
時代の最先端を走ってきたが、周りが時代に追いついて、その役割を終えたという意味もあるらしい。
※ 「ふくしまの西洋造り~明治洋風建築の通観(草野和夫著)」で、先に整理した「裁判所」の建物について、裁判所は何故か和風の建物が多い趣旨の紹介があって、面白い見方だなと思った。
※ 時計店名が、ただしくは「藪内時計店」のところ、思い込みがあって、誤って「藪木時計店」としていました。6/6に修正しました。
コメントありがとうございます。この整理をきっかけに、懐かしい建物の話をする機会が増えました。そんな中で、高校生とか、短大生とかという保存の権限のない方は、結構保存運動を展開したらしいことが分かりました。ただ、権限のある方が、ちゃちな運動を無視するという流れのようですね。権限を持たない小さな市民の運動には関心がないというのは、今も変わらないようですね。