フォーラムで上映された「トゥヤーの結婚」を観た。
生きるという生活の実感を基盤にした中で、互いに愛する故のギリギリの選択をする物語が展開する。現れる場面も、展開される物語も、初めて体験する状況設定だ。
草木もわずかな荒涼とした大地に、羊の群れを追うラクダに乗った女の姿が現れる。主人公のトゥヤーだ。ラクダを自由に操り、水を運び、羊を追う姿はたくましい。
この草原に生活するということは、日々の生活を支えることに加え、砂漠化に挑戦し、井戸を堀り、水を運ぶ戦いが付け加わるという過酷なものだ。それをトゥヤー一人で夫と子供の生活を支える。夫は、元々、村一番のたくましい男だったのだが、砂漠化に対抗するための井戸掘り事故で、下半身付随になってしまっているのだ。
羊の群れを、離れた遠い場所で放牧し、遠く離れた場所へ水を汲みに行き、家畜の世話をするのが、毎日の日課だ。猛暑だろうと厳しい冬であろうと、トゥヤーは一年中ラクダを引いて水を汲みに行かねばならない。この過酷な労働が彼女を蝕んでいくという状況だ。
妻の苦難を見て、もはや限界と感じた夫は、離婚し、自分が姉と暮らす事で、負担を軽くしようと決断する。トゥヤーも、仕方なく裁判所へ行く。
そして、家族への愛からひとつの決断をする。それは、新しく見つける夫は障害を負った夫も一緒に生活してくれる人に限るということだ。
結末は、結婚式の中で、総てが整いハッピーエンドのはずなのに、どこか切ない結末であることを象徴するできごとが起きる。
生きていくためにも、夫や家族への愛のためにも、理解し合い、総ての条件が整ったはずで、これ以上どうしようもないのだが、善良で家族の強い愛情の絆で結ばれているが故に、みなが苦しむ。
「トゥヤーの結婚」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
フォーラム・エキサイトシネマ映画解説