安積山②~安積沼とはなかつみ
2008年 05月 30日
安積山公園の入口付近にも「花かつみ」が植栽されている。
芭蕉は、奥の細道で、「山の井」の井戸の悲しい物語に思いを馳せ、ちょうど「花かつみ」の季節でもあったので、必死にその花を探したが、土地の人も知らなかったという。
このことも、散歩を楽しむためには、確かめておかなければならないことがあるらしい。
安積沼のはなかつみを人に尋ね歩いていたことは、陸奥守となった藤原実方が、端午の節句に菖蒲を葺くことを知らない土地の人々に、菖蒲がないなら「古今和歌集」に詠まれたあさかの沼の花かつみを葺けといったという古歌・故事にちなんだ行為とのことだ。
それに関わる古歌は、「古今和歌集」詠み人しらずの次の歌だ。
みちのくのあさかの沼の花かつみかつ見る人に恋ひやわたらん
それまで、「はなかつみ」は、万葉集にも登場する大変優美な花とのことだが、実際に存在する花ではないようなのだ。
それが、この歌で花かつみは、安積の沼にあると表記されたことの意義が大きいらしい。この歌は、都から遠いみちのくの安積沼というところに咲く花かつみという優美な花であることと恋の結びつきがいいと、古今集の編者にも大変好評であったそうだ。
この歌以来、花かつみは安積沼と結びつけて歌われるようになったという。
そして、安積沼という言葉は、みちのくの歌枕の一つとなり、花かつみは安積沼のみにはえる植物であるとまで考えられるようになっていったようなのだ。
こういった話があって、上記、陸奥守となった藤原実方の話になり、奥の細道では、安積沼のはなかつみを人に尋ね歩くという話になるということのようだ。
はなかつみは、いにしえの詩歌の中で開花する幻の花であり、安積沼のみにはえる植物であると考えられるのだから、芭蕉は、地元の人たちが言う花かつみの実態を知りたかったのだろうと想像する。
なお、この沼は、昔安積山の南西方向にあったとされているらしい。
はなかつみの候補は、古くは、真菰・田字草と言われ、江戸時代になると真菰・花あやめ・かきつばたなどといわれるそうだが、幻の花だから当然はっきりしない。
地元郡山市は、それはヒメシャガとして市の花 「花かつみ」として指定して、安積山にも植栽したということのようだ。